再生への道 世代超え(読売新聞, 2016年8月4日)

『読売新聞』に「ひがしまち街角広場」に関する記事が掲載されました。


高度経済成長期に各地の郊外で建設されたニュータウン(NT)が転換期を迎えている。街開きから半世紀余りを経た大阪府の千里NTモ、建物の老朽化や住民の高齢化などの課題に直面する。建て替えで世帯の若返りが進む中、世代間の交流を深める模索も始まっている。千里NTの取り組みから、再生への道を探る。

□千里ニュータウン
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国土交通省によると、計画上の人口3000人・戸数1000戸以上のNTは、全国に約2000地区ある。約5割は開発から40年以上が経過し、「老い」が進むNTはいずれも同じ悩みを抱える。
国や自治体も手をこまねいているわけではない。国は建て替えを促すため、同じ敷地に複数棟がある団地については、合意要件を土地の共有者「全員」から「3分の2以上」に緩和した。住宅メーカーと再生に向けた研究会を設立したり、空室が目立つ公営住宅に学生の入居を認めたりする自治体も広がる。
千里NT研究・情報センター代表の太田博一さんは「千里NTは交通至便で人気もあり、建物の再生は進んだが、空き店舗の有効活用など活気を取り戻す仕掛けが少ない。新旧住民の交流はNT共通の課題。双方が協力して、子どもたちが将来も住み続けたいと思える新しい街づくりに取り組むべきだ」と話す。

□住民の取組支援を
近畿大教授 鈴木毅さん 59
高度経済成長期に開発された各地のNTは、住民の価値観の多様化、ライフスタイルの変化などを踏まえ、住環境を再構築する時期を迎えている。
1960~70年代に、大都市のベッドタウンとして開発されたNTは、住宅や道路、商店などが計画的に配置されて住みやすく、当時は庶民の憧れだった。だが、今や家族構成や暮らし方は大きく変わった。高齢者が増え、新旧住民の交流のつながりも希薄になっている。
住民の暮らしに合わせたまちづくりが必要だが、行政や事業者の動きが鈍く、進んでいないのが現状だ。千里NTでも、開発を主導した大阪府などが2007年、再生指針をまとめたが、必ずしも指針に沿ったまちづくりができていない。
そんな中、住民自らが動き出した地域もある。「さたけん家」(吹田市佐竹台)や「ひがしまち街角広場」(豊中市新千里東町)といったコミュニティーカフェはその先駆けと言える。
NTにはそれぞれ歴史や個性がある。当事者である住民自身がまちづくりに参加することが、歴史を紡ぐことにつながる。行政や事業者には、住民の取り組みを支援する仕組みを整備することが求められる。

すずき・たけし 愛知県出身。専門は建築計画、環境行動研究。人が「居る」風景を通した環境デザインが研究テーマで、大阪大准教授時代から、千里NTの街づくりに携わっている。


※「再生への道 世代超え」・『読売新聞』2016年8月4日