近く閉店を前に、まちの居場所の19年間を振り返る(ひがしおか, 2020年9月1日)

新千里東町で隔月で発行されている地域新聞『新千里東町 ひがしおか』第118号(2020年9月1日)に、「ひがしまち街角広場:近く閉店を前に、まちの居場所の19年間を振り返る」を寄稿しました。

※『ひがしおか』第118号のPDFファイルはこちら

ひがしまち街角広場:近づく閉店を前に、まちの居場所の19年間を振り返る

新千里東町近隣センターの空き店舗を活用した「ひがしまち街角広場」は、住民の提案によって2001年9月に誕生しました。誰もがふらっと立ち寄ることのできる新千里東町の「居場所」として、また、住民同士のなにげない見守りの場として住民ボランティアの皆さんによって19年間運営されてきました。全国の住民運営の「コミュニティ・カフェ」の先駆けであり、モデルともなっています。しかし、近隣センターの移転・建替えのために、2021年春から2022年秋の間に閉店することが決まっています。この特集では、「ひがしまち街角広場」の役割がこれからの時代に合った形でつぎの世代に引き継がれていくことを願い、「ひがしまち街角広場」が誕生するまでの経緯や果たしてきた役割、生み出してきた価値を振り返ります。

「ひがしまち街角広場」が誕生するまで

2000年(平成12年)頃の千里ニュータウン

千里ニュータウン誕生から約40年が経過し、まちの環境や住民の状況は大きく変化して様々な地域課題が表面化してきました。

  • 若い世代の転出が進み、少子高齢化が進行
  • 団地の建替えの本格化による環境や近所づきあいの変化への関心・不安の高まり(特に高齢者)
  • 千里ニュータウン第一世代の定年退職の始まり
  • まちの中に、高齢者をはじめとした誰もがふらっと立ち寄れる日常的な交流の場がない。

※2015年までの人口は『千里ニュータウンの資料集(人口推移等)』(吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議, 2017年10月1日)に掲載のデータ
※2020年の人口は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計

2000年 新千里東町は国のモデル事業地区に

住民が地域課題の解決に取り組むために、新千里東町は国の「歩いて暮らせる街づくり構想」のモデル事業地区に指定され、構想が提案されました。

2001年(平成13年) モデル事業の実践として「ひがしまち街角広場」が誕生

「歩いて暮らせる街づくり構想」の住民提案の一つであった「近隣センターを生活サービスと交流拠点にしよう」が「ひがしまち街角広場」として実現しました。場所は近隣センターの空き店舗。住民の手によって改修され、住民ボランティア(無償)が運営するコミュニティ・カフェがオープンしました。最初の半年間は社会実験として豊中市から補助を受けて運営しましたが、その後は補助を受けずに自主運営を続けています。

(2001年9月 近隣センター北西角の空き店舗でオープン)

(2006年5月 現在の場所(元パン屋)に移転)

現在の運営状況

  • 運営費:飲み物代(お気持ち料)100円と貸室料(2時間500円~)を充当
  • 開店日・時間:土曜・日曜・祝日以外の11:00~16:00
  • 利用者数:1日当たり30~40数人程度
  • スタッフ:15人(曜日ごとの当番制)
  • 運営委員会:地域団体の代表とスタッフ代表で構成

「ひがしまち街角広場」の特徴

単なるカフェではなく「居場所」であること

「ひがしまち街角広場」は、誰もがふらっと立ち寄ってお茶を飲み、おしゃべりができるまちの「居場所」ですが、そのことがつぎのような住民同士のつながりや関係を生み出しています。

  • 道であいさつする顔なじみの人が増える。
  • お互いに教え合う、誘い合う、安否を気遣い合う関係が生まれる。
  • 子どもたちが水を飲みに立ち寄って大人と会話ができる。
  • スタッフと利用者は、サービスをする・されるの関係ではなく、「居場所」をともに盛り上げるパートナーである。

千里ニュータウンは計画的につくられたまちですが、専門家が気づかなかった暮らしの中の「居場所」を住民の工夫で生み出し、育んできました。このことは、新千里東町が誇るべきまちづくりの知恵であり、まちの宝です。

「居場所」を超えた役割を持っていること

「居場所」の運営とともに、地域貢献や各地の地域団体、国内外の大学との交流の場の役割も担ってきました。

  • 新聞「ひがしおか」の配布前の一時預かりやコミュニティルームのカードキーの保管・貸し出し、「竹林整備&住民親睦会」の主催などの地域貢献
  • 国の内外から千里ニュータウンや「ひがしまち街角広場」を訪れる見学者・研究者・学生の受け入れと交流(新千里東町の国内外に開いた「窓」の役割)
  • 「千里竹の会」や「千里・住まいの学校」、「千里ニュータウン研究・情報センター(ディスカバー千里)」などの市民団体が誕生した場所・活動の拠点

「ひがしまち街角広場」が「居場所」のモデルとして全国に知られている理由は、このような活動の広さにもあります。

(2019年3月 イギリス・オックスフォード大学研究者の見学)

(毎年4月の「竹林整備&住民親睦会」)

「ひがしまち街角広場」スタッフから
「ひがしまち街角広場」の利用者の皆さんからは、「私たちの行き場所がなくなってしまう」、「新しい会館のカフェはここのように私たちが気軽に行ける場所なのだろうか?」といった心配をよく耳にします。私たちは19年間、住民のつながりづくりと孤立防止を心掛けてきました。新会館のカフェを運営される方たちには、「ひがしまち街角広場」の利用者の声に耳を傾け、運営の考え方を参考にして、誰もが立ち寄ることのできる多世代交流の場づくりをお願いいたします。

閉店までのスケジュール

  • 2021年5月頃の商店街の移転時に現在の体制での「ひがしまち街角広場」は終了
  • 2022年7月頃の現近隣センター取壊しまで希望者を募って現在の場所で新たな居場所づくりの実験を行う予定(コミュニティ・カフェ、チャレンジショップ、共同オフィスなど)

※文責:千里ニュータウン研究・情報センター(ディスカバー千里)
※「近く閉店を前に、まちの居場所の19年間を振り返る」・『新千里東町 ひがしおか』第118号 2020年9月1日

(更新:2022年3月2日)